ISO/IEC 17025認証の「スコープ」確認:認証マークだけで安心できない理由
この記事の要点
- ISO/IEC 17025認証は「検査機関全体」への認証ではなく、試験項目ごとの認定範囲(スコープ)に基づいています
- カンナビノイド定量がスコープに含まれていない検査機関でも、認証マーク自体は提示できるため、マークの有無だけでは判断材料として不十分です
- スコープの確認は、認定機関が公開する認定範囲情報や、検査機関への直接照会で行います
「ISO/IEC 17025認証取得」という表示は、検査機関の信頼性を示す分かりやすい指標として扱われがちです。実際、楽天市場のCBD販売ガイドラインでも、ISO/IEC 17025認証機関または厚生労働省掲載の検査機関が発行したCOAであることが求められています。ただし、この認証は「検査機関そのもの」に対する包括的な認証ではなく、**試験項目ごとに設定された認定範囲(スコープ)**に基づくものです。認証マークがあることと、依頼したい検査項目がスコープに含まれていることは、別の確認事項です。
ISO/IEC 17025の「スコープ」とは何か?
ISO/IEC 17025に基づく認定は、次の3つの要素を特定したうえで、個々の試験について審査・認定されます。
- Method(試験方法): どの分析手法を用いるか(HPLC、LC-MS/MS等)
- Matrix(対象品目・母材): どの製品カテゴリを対象とするか(オイル、粉末、飲料等)
- Analyte(分析対象成分): どの成分を対象とするか(Δ9-THC、CBD等の個別カンナビノイド)
つまり「ISO/IEC 17025認証取得」という表示だけでは、この3要素のうちどの組み合わせが認定範囲に含まれているかまでは分かりません。ある検査機関が重金属検査や残留農薬検査でISO/IEC 17025認証を取得していても、カンナビノイド定量が認定範囲に含まれていない、というケースは起こり得ます。
認証マークだけで安心できない理由
認定範囲の中には「フレキシブルスコープ」と呼ばれる方式もあり、Method・Matrix・Analyteの3要素のうち1つまたは2つを固定し、残りの要素については検査機関側の裁量で認定範囲を広げられる仕組みが取られている場合があります。この場合、認定証に記載された範囲だけを見ても、実際にカンナビノイド定量が対象に含まれているかどうかが直感的に分かりにくいことがあります。
事業者側にとって重要なのは、「認証を持っているかどうか」ではなく「自社が依頼したい検査項目が、その検査機関の認定範囲に含まれているかどうか」という視点です。
自社が使う検査機関のスコープはどう確認すればよいか?
確認の実務的な流れは次のとおりです。
- 検査機関から認定証明書(Certificate of Accreditation)または認定番号の提示を受ける
- 認定機関(日本国内であれば公益財団法人日本適合性認定協会=JABなど)が公開している認定範囲の情報と照合する
- 対象成分(Δ9-THC等のカンナビノイド)と対象母材(自社製品の区分)が範囲に含まれているかを確認する
- 不明な場合は検査機関に直接、カンナビノイド定量がスコープに含まれているかを問い合わせる
確認したい項目を整理すると次のようになります。
| 確認項目 | 内容 |
|---|---|
| 認定番号 | 検査機関が保有する認定証明書の番号 |
| 認定機関名 | 発行元の認定機関(JAB等) |
| 対象成分(Analyte) | カンナビノイド(特にΔ9-THC)が含まれているか |
| 対象母材(Matrix) | 自社製品の区分(油脂・粉末・飲料等)に対応しているか |
| 認定の有効期限 | 認定証明書の有効期限内であるか |
海外ラボの場合の確認ポイント
海外の検査機関にもISO/IEC 17025に相当する認定制度があり、認定機関(米国のA2LAやANAB等)が同様の考え方でMethod・Matrix・Analyteのスコープを管理しています。海外ラボのCOAを日本の規制に読み替える際の全体的な考え方は海外ラボ発行のCOAを日本の規制に読み替える方法を参照してください。海外ラボの場合も、認定証明書に記載された認定機関名・認定番号を確認し、必要であれば認定機関の公開情報と照合するという基本手順は同じです。
COAの「有効性」全体との関係
スコープの確認は、COAの信頼性を判断するうえでの一つの観点にすぎません。ロット番号の一致や発行日の新しさなど、COA全体の有効性チェックについてはCOAの「有効性」チェック:ロット一致・発行日・サンプル代表性で扱っています。厚労省が公表している登録検査機関のリストを併用して確認する方法は厚労省の検査機関リストの確認方法と更新への追随にまとめています。
まとめ
☐ 「ISO/IEC 17025認証取得」の表示だけでなく、認定範囲(スコープ)を確認する ☐ スコープはMethod(試験方法)・Matrix(対象品目)・Analyte(対象成分)の3要素で構成される ☐ カンナビノイド定量が認定範囲に含まれているかを、認定証明書または検査機関への直接照会で確認する ☐ 海外ラボの場合も、同様の考え方で認定機関・認定範囲を確認する
スコープの解釈に迷う場合は、検査機関または認定機関に直接問い合わせるのが確実です。最終的な適合性の判断については、必要に応じて専門家への相談も検討してください。
よくある質問
ISO/IEC 17025認証を持っている検査機関なら、どんな検査でも信頼できますか?
いいえ。認証は試験項目ごとの認定範囲(スコープ)に基づいており、カンナビノイド定量がスコープに含まれていない場合、その項目については認証の裏付けがありません。
スコープはCOAのどこを見れば分かりますか?
COA自体にスコープの詳細は記載されないことが多く、検査機関が発行する認定証明書や、認定機関が公開する認定範囲の情報を別途確認する必要があります。
海外の検査機関の場合もスコープ確認は必要ですか?
必要です。海外にも同様の認定制度があり、認定機関やスコープの構成(対象成分・対象母材・試験方法)を日本の制度と同じ考え方で確認します。
スコープの確認は誰が行うべきですか?
検査を依頼する事業者自身が一次確認を行い、不明点があれば検査機関に直接問い合わせるのが実務的です。最終的な妥当性判断は専門家への相談も検討してください。
出典・参考情報
執筆: COAガーディアン編集部(運営: Asabis株式会社)
本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、法的助言ではありません。個別の輸入可否・規制適合性・出品可否については、厚生労働省等の一次情報の確認や専門家へのご相談のうえでご判断ください。
関連記事
厚労省Δ9-THC検査機関リストの確認方法と更新への追随
厚生労働省が公開するΔ9-THC検査可能機関リストの読み方、掲載の意味、更新頻度への追随方法をCOA発注者側の視点で整理します。
海外ラボ発行のCOAを日本の規制に読み替える方法
米国ラボ発行のCOAは%表記・Total THC・州基準のPass/Fail判定が中心で、日本の製品区分別ppm規制とは前提が異なります。%からppmへの換算例つきで読み替え手順を具体的に解説します。
COAの「有効性」チェック:ロット一致・発行日・サンプル代表性
THCの数値が規制値内でも、ロット番号の不一致や別商品のCOAの流用があれば、そのCOAは実質的に無効です。ロット照合・発行日確認・サンプル代表性という有効性確認の実務手順を解説します。