LOD/LOQ未記載のCOAで適合判定してよいか
この記事の要点
- Δ9-THCが「ND」と記載されていても、LODの数値が不明なら製品区分を問わず適合を確認できません
- 「<LOQ」の場合は保守的にLOQ値を計算値として採用し、総THC値を算出します
- このLOD/LOQ要件はΔ9-THC(総Δ9-THC)にのみ適用され、禁止カンナビノイドにはLOD/LOQの要件はありません
CBD製品のCOAで最も見落とされやすいのが、LOD(検出限界)・LOQ(定量下限)の記載有無です。「Δ9-THC: ND」と書かれているだけで安心してしまうケースは多いですが、実務上はLODの数値が分からなければ適合を確認できません。本記事ではその理由と、実際の判定基準を計算例とともに解説します。
LOD/LOQとはそもそも何か?
LOD(Limit of Detection・検出限界)は、検査機器が「検出できる」最小の濃度です。LOQ(Limit of Quantitation・定量下限)は、検出した濃度を「数値として確定できる」最小の濃度で、通常LODより高い値になります。分析技術そのものの詳細はここでは扱いませんが、判定に必要な範囲で押さえておくべきは次の点です。
- 「ND(不検出)」は、検査機器のLODより低い濃度だったことを意味する
- LODの値が規制値より高ければ、実際には規制値を超えていてもNDと表示される可能性がある
なぜLOD未記載だと適合と判定できないのか?
Δ9-THCの残留限度値は製品区分ごとに10ppm・0.1ppm・1ppmと定められています。COAに「ND」とだけ書かれていて、LODの数値が記載されていない場合、その検査機器が0.5ppmまで検出できるのか、5ppmまでしか検出できないのかが分かりません。
もしLODが5ppmだったとすると、「その他」区分(1ppm以下)の製品は、NDと表示されていても実際には1ppmを超えている可能性を否定できません。したがって、LODの数値が記載されていない場合、区分を問わず「適合を確認できない」=不適合として扱うのが安全な判断です。「通常のラボであれば十分な感度があるはず」といった推定で適合と判断するのは避けてください。
適合を確認できるケースの計算例
COAにLODの数値が記載されている場合は、次の式でワーストケースの総Δ9-THCを計算し、規制値と比較します。
ワーストケース総Δ9-THC = LOD(Δ9-THC) + LOD(Δ9-THCA) × 0.877
計算例1(適合と判断できるケース): LOD(Δ9-THC) = 0.3ppm、LOD(Δ9-THCA) = 0.3ppmの場合、 ワーストケース総Δ9-THC = 0.3 + 0.3 × 0.877 = 0.563ppm
この場合、油脂・粉末区分(10ppm以下)および「その他」区分(1ppm以下)はNDのまま適合と判断できます。ただし飲料区分(0.1ppm以下)は0.563ppmが上回るため、要注意です。
計算例2(適合を確認できないケース): LOD(Δ9-THC) = 1ppm、LOD(Δ9-THCA) = 1ppmの場合、 ワーストケース総Δ9-THC = 1 + 1 × 0.877 = 1.877ppm
この場合、「その他」区分(1ppm以下)・飲料区分(0.1ppm以下)はNDでも適合と確認できません。油脂・粉末区分(10ppm以下)はワーストケースでも下回るため適合と判断できます。
「<LOQ」の扱いはどう考えればよいか?
「<LOQ」「定量下限未満」という表記は、「検出されているが正確な数値までは確定できない」状態であり、NDとは区別されます。この場合、保守的に当該成分のLOQ値を計算値として採用し、0として扱いません。
総Δ9-THC = [Δ9-THC: <LOQならLOQ値/数値ありはその値] + 0.877 × [Δ9-THCA: <LOQならLOQ値/数値ありはその値]
計算例3: Δ9-THC = <LOQ(LOQ = 0.5ppmと記載)、Δ9-THCA = NDの場合、 総Δ9-THC = 0.5 + 0.877 × 0 = 0.5ppm として計算します。
この場合も油脂・粉末(10ppm以下)・その他(1ppm以下)区分では適合と判断できますが、LOQの数値自体が記載されていない「<LOQ」表記の場合は、LODと同様に数値が確定できないため適合を確認できません。
禁止カンナビノイドにはLOD/LOQの要件はない
このLOD/LOQに関する厳格な要件は、Δ9-THC(総Δ9-THC)にのみ適用されます。HHC・Δ8-THC・THCP・THCH・CBN等の禁止カンナビノイドについては、COAにその物質の検査結果が記載されている場合、NDであれば足り、LOD/LOQの数値記載は求められません。禁止カンナビノイドはΔ9-THCとは異なり、残留限度値ではなく「検出=違法」という扱いのためです。
検査パネルに含まれていない禁止物質の扱いについては、禁止カンナビノイドがCOAに載っていない時の考え方で詳しく解説しています。
LOD未記載COAを受け取ったときの実務対応
☐ 検査機関にLODの数値を明記した再発行を依頼する(多くの場合、追加検査なしで対応可能) ☐ サプライヤー経由のCOAであれば、元の検査機関への確認をサプライヤーに依頼する ☐ どうしてもLODが確認できない場合は、当該ロットでの販売を保留し、再検査を検討する
LOD未記載は、COAそのものの品質・記載様式の問題であることが多く、多くの場合、再検査ではなく検査機関への開示請求で解決します。判定の全体フローはCOAセルフチェック7ステップ、規制値全体の整理は日本のTHC残留限度値、コンプライアンス対応全体の地図はCBD製品コンプライアンスチェック完全ガイドを参照してください。
COA GuardianではCOAのPDFをアップロードすると、LOD/LOQの記載有無を含めてAIが自動でチェックします。トップページから無料でお試しいただけます。
まとめ
LOD/LOQが記載されていないCOAは、Δ9-THCの数値がNDであっても、製品区分を問わず適合と判定することはできません。LODの数値が分かればワーストケース計算で適合可否を判断でき、「<LOQ」の場合は保守的にLOQ値を採用します。この要件はΔ9-THCにのみ適用され、禁止カンナビノイドにはLOD/LOQの記載は求められません。
よくある質問
LODが記載されていないCOAは、それだけで使えませんか?
そのままでは適合の根拠として使えません。検査機関にLODの数値を追記した再発行を依頼するのが実務上の対応です。
<LOQと記載されている場合はどう扱えばよいですか?
検出はされているが定量できない状態のため、保守的にLOQの数値を計算値として採用します。LOQの数値も不明な場合は適合を確認できません。
禁止カンナビノイド(HHC等)にもLOD/LOQの記載は必要ですか?
必要ありません。Δ9-THC以外の禁止物質は、検査結果がNDであれば、LOD/LOQの数値がなくても問題視されません。
出典・参考情報
執筆: COAガーディアン編集部(運営: Asabis株式会社)
本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、法的助言ではありません。個別の輸入可否・規制適合性・出品可否については、厚生労働省等の一次情報の確認や専門家へのご相談のうえでご判断ください。
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