日本のTHC残留限度値:販売前に事業者が確認すべきこと【2026年版】

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この記事の要点

  • THC残留限度値は製品区分ごとに異なります(油脂10ppm/粉末10ppm/水溶液0.1ppm/その他1ppm)
  • Vapeリキッドなど吸引用の液体製品は「油脂」ではなく「その他」区分(1ppm)として扱われます
  • 総THCはΔ9-THC+Δ9-THCA×0.877で計算し、COAのLOD(検出限界)記載も併せて確認する必要があります

CBD製品を輸入・製造・販売する事業者にとって、THC残留限度値の確認は出品可否を左右する最初の関門です。2024年12月12日に施行された改正大麻取締法(現・大麻草の栽培の規制に関する法律)により、大麻由来製品の規制は「部位規制」から「成分規制」へと転換し、Δ9-THCの残留限度値という新しい基準が導入されました。本記事では、事業者が販売前に自社製品を照らし合わせるべきポイントを、法解釈の深掘りではなく「実務上どう確認するか」という視点で整理します。

THC残留限度値とは何か?

THC残留限度値とは、CBD製品などの大麻由来製品に残留することが許容されるΔ9-THC(テトラヒドロカンナビノール)の上限値です。この値を超える製品は、麻薬及び向精神薬取締法上の麻薬に該当するものとして扱われ、製造・輸入・販売が禁止されます。

2024年12月12日の施行以前は、大麻草の「部位」(茎・種子は規制対象外、葉・花穂は規制対象)によって合法・違法が区別されていました。改正後は部位を問わず、最終製品に残留するΔ9-THCの量そのものが基準になります。この転換により、茎由来の原料を使った製品であっても、製造工程での混入によりTHCが検出されれば規制対象になり得る点に注意が必要です。

改正法は2段階で施行されており、2024年12月12日に大麻使用罪の新設と残留限度値の導入が、2025年3月1日に大麻草採取栽培者の免許制度が施行されています。事業者にとって直接関係するのは前者の残留限度値であり、本記事で扱うのはこの部分です。

なぜ部位規制から成分規制に変わったのか、背景を一言で言えば「部位だけでは実際の精神作用リスクを測れない」という認識です。茎由来を謳う原料であっても製造工程で葉・花穂由来の原料と混ざればTHCが残留し得ますし、逆に部位規制下では「茎由来だから合法」という説明だけでTHC濃度が確認されないまま流通するケースもありました。成分規制はこの抜け穴を塞ぐ制度変更であり、事業者側からすれば「原料の由来」ではなく「最終製品のTHC濃度」を管理する体制への転換を意味します。

製品区分別の限度値一覧

限度値は一律ではなく、製品の形状・用途によって4つの区分に分かれています。

製品区分 限度値 該当する製品例
油脂 10ppm CBDオイル、オイルカプセル、化粧品用オイル
粉末 10ppm パウダー、サプリメントの原末、粉末飲料
水溶液 0.1ppm 清涼飲料水、ドリンク剤
その他 1ppm グミ、チョコレート等の菓子類、Vapeリキッド・カートリッジ、化粧水など

ppmは百万分率で、1%=10,000ppmです。10ppmは0.001%、1ppmは0.0001%、0.1ppmは0.00001%に相当します。桁が3〜4桁ずつ動くため、COAの表記単位(%表記かppm表記か)を取り違えないことが実務上の第一歩になります。

表を見て分かる通り、水溶液の限度値(0.1ppm)は油脂・粉末(10ppm)の100分の1です。同じ原料を使っていても、最終製品の形状を油脂からドリンクに変えるだけで、許容されるTHC濃度が100倍厳しくなります。原料の仕入れ段階で「このロットはどの製品ラインに使う想定か」を明確にしておかないと、区分ごとの管理が後から破綻しやすくなります。

自社製品はどの区分に該当するか?

区分の判断で最も事故が起きやすいのが「液体だから油脂区分」という思い込みです。区分は成分の状態(液体・固体)ではなく、製品としての用途・形状で決まります。

判断の目安は次の順で確認します。

  1. 経口摂取を目的とした油性の液体(オイルドロップ、オイルカプセルの中身など)→ 油脂(10ppm)
  2. 経口摂取を目的とした粉末・顆粒(サプリメント原末、粉末飲料の素など)→ 粉末(10ppm)
  3. そのまま飲用する液体(清涼飲料水、ドリンク剤)→ 水溶液(0.1ppm)
  4. 上記のいずれにも該当しない形状(菓子類、化粧品、吸引を目的とするVapeリキッド・カートリッジ)→ その他(1ppm)

特にVapeリキッドは「液体だから油脂」と誤認されやすい典型例です。吸引を目的とする液体製品は「その他」区分(1ppm)として扱われるため、油脂区分(10ppm)を前提に仕入れ判断をすると、実際には10倍厳しい基準に抵触するリスクがあります。

このほかにも、判断に迷いやすい製品はいくつかあります。

  • CBDバーム・ロールオン(塗布用): 経口摂取を前提としないため、油脂区分ではなく「その他」区分として扱われるのが実務上の整理です
  • CBD入り化粧水・美容液: 化粧品としての用途であり「その他」区分に該当します
  • CBDカプセル(オイルを充填したもの): 中身が油性であっても、カプセル自体は経口摂取用の油脂として油脂区分(10ppm)で判断されるのが一般的です
  • CBD入りプロテインパウダー: 経口摂取目的の粉末であれば粉末区分(10ppm)に該当します

自社製品がどの区分に該当するか判断がつかない場合、思い込みで進めず、仕入れ先や検査機関に確認するのが安全です。区分の誤りが引き起こす事業リスクの詳細は「製品区分(油脂・粉末・水溶液)を誤るとどうなるか」で扱っています。

総THCの計算方法

COAにはΔ9-THCとΔ9-THCA(THCの酸性前駆体)が別々に記載されることがあります。THCAは加熱により一部がΔ9-THCに変化するため、規制上の限度値判定では両者を合算した「総THC」をワーストケースとして扱うのが実務上の考え方です。

計算式は次の通りです。

総THC = Δ9-THC + Δ9-THCA × 0.877

例えば、あるCBDオイルのCOAに「Δ9-THC 0.8ppm」「Δ9-THCA 0.5ppm」と記載されていた場合、

総THC = 0.8 + 0.5 × 0.877 = 0.8 + 0.4385 = 1.24ppm

となり、油脂区分の限度値10ppm以下であるため、この項目については適合と判断できます。一方、同じ数値のVapeリキッド(その他区分・限度値1ppm)であれば、1.24ppmは限度値を超過しており不適合となります。区分と数値の両方を照合して初めて合否が判断できる点が、THC残留限度値確認の要です。

もう一例、境界線上のケースを見てみます。ある水溶液飲料のCOAに「Δ9-THC 0.05ppm」「Δ9-THCA 0.06ppm」とある場合、

総THC = 0.05 + 0.06 × 0.877 = 0.05 + 0.0526 = 約0.103ppm

水溶液区分の限度値0.1ppmをわずかに超えます。Δ9-THC単体では基準内に見えても、THCAを合算すると超過するというのは実務上よく起きるパターンであり、Δ9-THCの数値だけを見て安心してしまうことが典型的な見落としです。

COAでどこを確認すればよいか

限度値との照合には、COA(分析証明書)上のΔ9-THC・Δ9-THCAの数値だけでなく、LOD(検出限界)・LOQ(定量限界)の記載も必須です。ND(不検出)と記載されていても、LODが限度値以上であれば「限度値以下であることを示せていない」状態にすぎず、適合の根拠にはなりません。

COAの読み方・LOD/LOQの詳しい確認手順は、「COAセルフチェック7ステップ」で専門知識がなくても実践できる形にまとめています。COA Guardianでは、アップロードしたCOA PDFをAIが解析し、区分別の限度値との照合結果を無料で確認できます。

またTHC残留限度値は、CBDが検出されるかどうかとは別軸の話です。HHC・THCP・CBNなど禁止カンナビノイドが検出された場合は、残留限度値の議論以前に無条件で不適合となります。禁止カンナビノイドがCOAの検査項目に含まれていない場合の考え方は別記事で扱いますが、THC残留限度値のチェックと禁止カンナビノイドのチェックは、どちらも省略できない別々の確認項目だと理解しておく必要があります。

限度値を超えていた・不明な場合はどうすればよいか

COAを確認した結果、限度値を超えている、あるいはLOD不明で適合を確認できない場合は、その時点での販売・出品を止め、事実確認を優先することが実務上の対応です。自主検査で気づいた場合と、行政やモールから指摘を受けて発覚した場合とでは初動が異なりますし、在庫の隔離・仕入先への照会・再検査の要否など判断すべき項目も多岐にわたります。断定的な対処法は状況によって異なるため、「THC基準超過が発覚したら」で発覚パターン別の初動フローを整理しています。

超過が事業に及ぼす責任の範囲(罰則・経営者の責任)について確認しておきたい場合は、「CBD事業の法的責任」も参考にしてください。

まとめ:販売前チェックリスト

☐ 自社製品が油脂・粉末・水溶液・その他のどの区分に該当するか特定した ☐ Vapeリキッド等の吸引製品を誤って油脂区分(10ppm)で判断していないか確認した ☐ COAのΔ9-THC・Δ9-THCA数値から総THC(Δ9-THC+Δ9-THCA×0.877)を計算した ☐ COAにLOD/LOQの記載があり、区分の限度値と比較できる状態か確認した ☐ 限度値超過・LOD不明の場合は販売を保留し、事実確認のフローに入った

THC残留限度値の確認は、一度覚えれば毎回同じ手順で判断できる実務です。区分の見極めと総THCの計算、COAのLOD確認という3点を押さえることで、専門知識がなくても販売前のセルフチェックが可能になります。

THC規制まわりの実務対応(関連記事)

THC残留限度値の確認は、CBD事業のコンプライアンス対応の入口にすぎません。関連する実務は以下で扱っています。

規制は改正が続いている領域です。本記事の数値・施行日は2026年7月時点のものであり、仕入れ・出品のタイミングで厚生労働省の最新情報を必ず確認してください。

よくある質問

THC残留限度値はどの法律で決まっていますか?

「大麻草の栽培の規制に関する法律」(旧・大麻取締法)に基づく厚生労働省告示で、2024年12月12日に導入されました。

Vapeリキッドは油脂区分(10ppm)になりませんか?

なりません。液体であっても吸引を目的とするVapeリキッド・カートリッジ類は「その他」区分(1ppm)として扱われます。

COAがND(不検出)表記なら区分にかかわらず適合と考えてよいですか?

いいえ。LOD(検出限界)が不明、または限度値以上のLODでのNDは「適合を確認できない」扱いになります。LODの記載を必ず確認してください。

限度値は今後変わる可能性がありますか?

あります。カンナビノイド規制は改正が続いているため、仕入れ・販売の都度、厚労省の最新情報を確認することをおすすめします。

グミやチョコレートなどの食品はどの区分ですか?

油脂・粉末・水溶液のいずれにも明確に該当しない食品形状は「その他」区分(1ppm)として扱われるのが実務上の整理です。

出典・参考情報

執筆: COAガーディアン編集部(運営: Asabis株式会社)

本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、法的助言ではありません。個別の輸入可否・規制適合性・出品可否については、厚生労働省等の一次情報の確認や専門家へのご相談のうえでご判断ください。

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